midqqのブログ

マンガとSF、時々テクノロジー。その他、雑多に書き綴ります。

議会質問を作る都職員の気持ちが、少しは分かるかも? ~ 「地方自治体に営業に行こう!!」

 小池都知事が、「都職員が議会質問を作る慣習を禁止」と、ニュースになっています。

たまたま読んでいた本「地方自治体に営業に行こう!!」のおかげで、都職員の気持ちが少しは分かりました。

地方自治体に営業に行こう!!

地方自治体に営業に行こう!!

 

この本の5章に、地方自治体の予算について、分かりやすく説明がされています。議会は、予算要望を提出し、地方自治体からの予算案を議決する役割があります。地方自治体は、予算がないと仕事が出来ませんから、予算取りに必死になります。少しでも予算案を通しやすくするため、こういった慣行が出来たのでしょうね。

ただ、質問される側が質問も作ったら、聞かれたくない事は質問しないでしょうし、利用者(地域住民)の目線からの質問は出てきません。予算案に対する質問だと考えれば、反対意見が出づらく、もくろみ通りに予算案が通りやすくなります。

地域住民(都民)から見れば、地方自治体のお手盛り予算になっている可能性もあり、よい慣行とは言えないでしょう。止めてもらって正解だと思います。

 

だいぶ横道にそれました。

地方自治体に営業に行こう!!」ですが、地方自治体にも詳しくなれるので、営業に行こうと考えていない方にもおすすめ出来ます。著者が、官公庁営業の研修などをされていることもあり、読みやすい文章です。

地方自治体に営業に行こう!!

半世紀経っても色褪せないSF ~ アーサー C クラーク 「2001年宇宙の旅〔決定版〕」(小説版)

 「ブログの説明」に『SF』と言う単語を挙げておきながら、これまで、SF小説の感想エントリが皆無だったことを白状します。当ブログの迷走ぶりが伺えます(苦笑)。

さて、手ごろなSF小説を読もうと思い立ちました。ちょっと言い訳しますと、少し前に、いろんな意味でハードなSF小説を読破したものの、うまく咀嚼出来ておらず、口直しのSFが必要だったということもあります。そこで、過去に読んだ可能性はあるものの全く記憶が残っていない、読んでおくべきSF小説、「2001年宇宙の旅」を読む事にしました。

2001年宇宙の旅〔決定版〕

2001年宇宙の旅〔決定版〕

 

 感想

まず、読みやすかったです。冒頭でも書きましたが、一つ前に読んだSFがハードだったこともあります。(ただ、その作品はハードだったものの、傑作でした。またの機会にご紹介します。)

小説「2001年宇宙の旅」が出版されたのが1968年ですから、ほぼ50年前になります。半世紀!も経っていますが、古臭い感じはしません。敢えて挙げるとすれば、今は無きソ連が出てくることくらいでしょうか。

後のSFに様々な影響を与えた偉大なる作品で、映画にもなっています。映画製作と同時進行で書かれているので、よくある「映画の原作」や「映画の小説版」とは異なった、珍しい経緯のある作品です。

宇宙開発

現実世界を振り返ってみると、人類が月に足跡を残す前に書かれた小説ですが、それから宇宙開発は当時想像されているより停滞しているように思えます。アポロ計画以降、月への有人飛行は途絶えたままですし、火星への有人飛行の開発も進められているようですが、あと何十年かかるか分からない状況です。言わずもがな、地球外知的生命体との邂逅も、いつになることやら。

AI

AIについても、ようやく囲碁勝負で人類を超えた程度で、想像されているより進んではいません。ただ、こちらは宇宙開発と違い、加速度的に発達するはずですから、あと50年も経たずにシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えるかもしれません。

最も印象的だった場面

最後に、この小説で一番印象に残った場面を書いておきます。反乱を起こしたAI、HALを停止に追い込んだ後、地球との通信も途絶え、他の乗組員が全員死亡していることが確認された場面です。こんな孤独な場面に遭遇したら、私なら正気でいられなくなること、請け合いです。しばらくして地球との通信が回復しますが、もし回復しないままだったらと想像すると、ぞっとしました。

2001年宇宙の旅〔決定版〕

名場面であったろう直前で途切れた物語 ~ 芥川龍之介 「邪宗門」

未完・・・

邪宗門

邪宗門

 

地獄変」と同じ登場人物が出てくる作品で、ちょい役だった堀川の若殿が主役です。時間軸は、「地獄変」から10年経つか経たないか、それくらいでしょうか。

この小説を自己流に一言で表すと『異教を広める悪役修行者と、平安貴族サイドとのバトル物』になります。高位の仏教僧が、悪役修行者との法力対決に敗れ、いざ主役の若殿登場と言う場面で途切れ、未完になっています。

物語としては、これから!と思われる場面で続きが読めません。芥川龍之介の中期の作品なので、死去による未完と言うより、なんらか理由があって、続きが書かれていないのだと思います。

地獄変」に描かれる人間の業の壮絶さといったものは感じられなくて、娯楽性の高い大衆小説のようです。未完のままでよかったのか、完成していたら芥川龍之介の代表作になっていたのか、解けない謎が残る作品でした。

邪宗門

 

地獄変」の感想はこちら。 

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ゾクゾクするほど綺麗!ドローンに近未来を感じた ~ Intel's 500 Drone Light Show

なんやこれ、めっちゃ綺麗!

しかも500機のドローンやて!?


Intel's 500 Drone Light Show | Intel

 

SFチックな光景ですが、現実の光景なんです。動画を見て、正直ゾクゾクしましたよ。ショー自体も綺麗ですごいんですが、ドローンたちが飛び立つところと、1か所に集まりつつ降りてくるところに、なぜだかミツバチとか小鳥の集団の可愛らしさを感じちゃいました。

実際に見てみたい~!!

 ***

これ、1機ごとの自動制御でしょう。それぞれが衝突せずに飛んでいるだけでもすごいのに、幻想的な立体イルミネーションが実現しています。ドローンのテクノロジーは、こんなにも進歩しているんですね。空を飛ぶラジコンのオモチャみたいなものとの古臭い意識を改めざるを得ません。

ドローンによるイルミネーションは、将来的に、モノスゴイ事になるんじゃないでしょうか。そのうち、火薬を使った花火は、ほとんど無くなっちゃうかも。500機でこの美しさなら、もっと小型化して数が100倍の5万機くらいの光景を想像すると、花火なんか目じゃない幻想的な光景が実現しそう。野外プラネタリウムなんかも出来そうだし、末恐ろしいテクノロジーだ。

私、テクノロジーとかSF好きなもんで、そっち方面でもゾクゾクしましたね。

 

これを見て強く思ったこと。

日本も、しょうもないドローン飛行禁止ばっかりしていると、世界に置いてけぼりをくらいそう。こういった小型機器は日本が得意そうなのに、もったいない・・・

なんて言っておらず、何か取り組めないかな、自分。

 

おまけ。

米国のディズニーワールドで、Starbright Holidays Aerial Drone show というショーが開催されたようです。そのうち、日本のディズニーランドでもやるのかな。でも、規制があるし、どうだろうね。


Starbright Holidays Aerial Drone show at Disney Springs

 


Experience Starbright Holidays – An Intel Collaboration | Intel

私も、見事に引っかかった! ~ ブルーバックス 「超常現象をなぜ信じるのか 思い込みを生む「体験」のあやうさ」

まず断っておきますが、タイトルに掲げた本は、超常現象を否定している内容ではありません。

UFO(未確認飛行物体)やUMA(未確認動物)、超能力や占いを信じる人でも、安心して読めますし、蔓延っている似非科学や、宗教と言っても差し支えない科学教的な内容でもありません。

まっとうな科学本です。

 感想

この本には、人間の認知の偏りを知るためのテストがいくつかあります。それほど難しいテスト問題ではないはずなのですが、ほとんどの問題で、見事に引っかかりました。疑い深くて論理的だと思っている私(笑)が、です。

また、自身を客観的に捉えるための、いわゆるメタ思考に役立つことが多く書かれています。印象に残った二つほどを、紹介しましょう。

予期にそって情報を確証しようとする確証バイアスが、ステレオタイプ的なものの見方を助長している

予期に沿った情報収集が行われてしまう事には、うなずかざるを得ませんでした。

例えば、初対面の人について、あらかじめ「内向的な性格」との情報を得ていた場合、「騒々しいパーティーのどんなところが嫌いですか?」といった、予期を確認する質問が多くなるのは、心当たりがあります。

その人が、内向的な面も外向的な面もそこそこ合わせもった人、つまりふつうの人でも、「内向的な性格」という予期にそった答えになってしまうことが多いので、予期を確証することになってしまうとのこと。

こういった認知が、ステレオタイプ的なものの見方を助長してしまうんですね。

回帰の誤認識が「ほめること」と「叱ること」に関する誤信念を生み出す

この事実は、目からウロコでした。

「叱ることが非常に効果的だという素朴な信念」が、回帰の誤認識によるところもあるといった話は、衝撃的でした。

よいこともすればわるいこともするふつうの子なら、よいことをした後にはわるい状態へ回帰する可能性が高い、その逆に、わるいことをした後にはよい状態へ回帰する可能性が高い、というのは確率論でも正しいことは分かります。

これが、「ほめた後にはわるくなる」、「叱った後にはよくなる」という具体的な体験をもつことになり、叱ることへの信頼を生み出してしまうとのこと。

だから「ほめて伸ばす」ほうがよい結果をもたらすんですね。教育心理学の研究でも、明らかになっており、科学的にも正解なんですね。

 

星5つのところ、星4つ。自身を見つめなおすこともできる、優れた科学本です。

唯一、残念なのところは、固定レイアウト(ページ全体が画像のような扱い)になっていることです。文字列を反転できないので、知らない単語を調べるのが面倒だったり、気になる箇所をハイライト出来ません。

超常現象をなぜ信じるのか 思い込みを生む「体験」のあやうさ (ブルーバックス)

素直に読めなかった童話 ~ 芥川龍之介 「白」

真っ白なワンちゃんが、真っ黒になってしまうお話。

白

 

荒っぽく筋書きを描けば、「飼い犬がある出来事から住処を追われる。罪の意識にさいなまれ、自死のために各地を放浪。意図せず徳を積み重ねたため、最後に救済される。」そんな童話です。

よくできた童話なのでしょうけれど、素直に読めなかったです。

 

最近読んだ芥川の作品「河童」や「地獄変」、芥川自身に共通する、「自殺」。この「白」の主人公も、罪の意識から自死するため、各地を放浪して無茶な行動を繰り返しています。そんなテーマは、どうも暗くて潔癖過ぎて、好きになれません。

真っ黒に毛並みに変えられたことで神を呪ったり、やけっぱちの破れかぶれになってくれたほうが、人間らしく思うのです。

最後に主人公が救われたのは、ほっとした半面、救われて欲しくなかったと思ったのは、私の性格が歪んでいるからなのでしょうか。

誰が地獄へ落ちるべきか ~ 芥川龍之介 「地獄変」

武士の世になる前の、貴族の世の物語、大好きです。 おどろおどろしい人間のありようが、グッときます。

地獄変

地獄変

 

 

いろいろな解釈が出来る作品なので、そこがまたよいです。芥川龍之介の芸術至上主義を、「地獄変」を描いた絵師良秀を借りて表現しているといったところが、よく見かけるところです。

 感想

 読み終えて、まず思ったのは、大殿の残酷さでした。良秀の娘を車ごと焼き殺す趣向を考えたのは、大殿です。さすがの良秀も、娘を助ける行動に出ると考えていたに違いありません。それが、芸術のためには娘の死も厭わなかったため、青ざめていたのでしょう。

いずれにせよ、地獄変の絵に描かれているように、身分や年齢に関係なく人間は地獄に落ちるべしと言われているようで、恐ろしいです。物語の中で言えば、良秀は言うに及ばず、大殿や良秀の娘も、地獄に落ちろと。そして、語り手の奉公人でさえ・・・。

 

ただ、望むとすれば、猿の良秀だけは、天国へ召されていて欲しいです。