彼が居た世界 ~ 蟲師 外譚集
『蟲師 外譚集』は、彼(蟲師ギンコ)が居たであろう世界を、普段と違った味で感じることが出来る作品でした。
蟲師 外譚集とは
外側の”譚”(物語)と言うタイトルが示すように、漆原友紀さんの『蟲師』をベースにした、別の作家さん5名によるオリジナル短編集です。『蟲師』が掲載されていたマンガ雑誌「アフタヌーン」つながりの作家さんによる一種のアンソロジーコミックと言えます。蟲師ギンコの居た世界と、時間と場所は違ったりしますが、同じ”蟲”の居る世界を描いています。
少々残念なのは、原作の作家である漆原友紀さんは、カバーイラストと折り返し部分のコメント*1のみで、本編中に作品はありません。
感想
表紙 漆原友紀さん
漆原友紀さんの作品が読めないのは残念ですが、表紙は描き下ろしとのことで、じっくりと眺めてみると、結構、味わい深いです。
鉄道か道路か不明ですが、海岸沿いの高架下に佇むのは、蟲師のようです。コートのような服装をした姿や引き出しの多い薬箱から、蟲師の主人公ギンコを彷彿とさせます。
高架下の上部にかかるツタに紛れて、蟲たちもたむろしています。蛍光灯のような街灯や、電柱に伸びた電線、車止めのバーなど、本編より現代に近いようですが、変わらず蟲は居る(在る?)ようです。
高架の柱に貼られている注意看板は、Kindle版では、ぼんやりしてよく分からないのですが、自転車?に対して何を注意喚起しているのか気になります。
歪む調べ 熊倉隆敏さん
原作の9巻「風巻き立つ」に話に出てきた身を滅ぼした蟲師のお話かもしれない。正しく扱えば有用だが、間違った使い方をすれば災厄が起こるという、現実でも似たような話がころがってます。
他の4作品と違い、この作品は話の雰囲気も原作に似ています。完結している『蟲師』だけれど、もう1話が余分に読めてよかったと思うような作品。ギンコは出ませんが。
滾る湯 吉田基己さん
蟲師のお話は、薄ら怖いものが多いですが、これはそういった感じを受けない、まさに違った味でよかった。温泉でのお話と言うこともありますが、読み終わった後にポカポカします。
つまらない感想を一つ。体温が高温になると男性機能に悪影響が出ますが、彼は大丈夫だったのかな?
海のちらちら 芦奈野ひとしさん
ホコリっぽい日に目のすぐ近くで見える泳ぐような細いのや、ぎゅっと目をつぶったときに見えるチカチカも、実は蟲なのかも。そんなふうに思えると楽しい。
Amazonかどこかのサイトで見かけた感想に、ポエムと書かれていた人がいましたが、同じような感想を持ちました。
組木の洞 今井哲也さん
現代の蟲師グループの活動風景、新宿駅のウロ穴が舞台。本当の新宿駅も、まさしく迷宮ですから似たようなものかも。絵柄のせいか怖さを感じませんが、実際は怖さもあるお話。
お姉ちゃんと喧嘩した妹が、元気を取り戻したのは良かった。笑顔に萌え~。
蟲師の世界感をおさらいできます。
影踏み 豊田徹也さん
豊田徹也さんの作品に出ているらしい探偵山崎の不思議で物悲しいお話。その探偵さんが住む現代世界に、蟲が絡んだ事案があれば、こんなふうなのかな。やる気なさげでテンション低いけど、やることはやる寝ぐせ?ヘアーの探偵さん、好きになりました。豊田徹也さんの作品を読んだことが無いので、読もうと心に誓ったのでした。
お話は終わっても、蟲に囚われたままの人がいるのは、正直怖いな。
過去記事では、漆原友紀さんの特別篇の感想を書いています。