アメリカン和牛(SF短編)
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成人男性を対象とすれば引き締まった臀部。成人女性を対象とすれば、ふくよかであるものの、つつましやかな胸部と返答するべし。
エビゾウは、問いかけに対する返答を即座に準備し終えた。
「蟻がいるよ!いっぱいいっぱいいるよ!」
「わかったから。いっぱいいるのはわかったから、外に出ないの!」
ランチの時間帯は、ものすごく賑やかだ。ここは、”エンジ”が10人ほどいる小規模な施設だ。”ホイクシ”は3人、いや我々ロボットを含めれば5人というべきか。二人の”エンジ”を一人の”ホイクシ”が面倒を見る計算だ。これはかなりの重労働に属するだろう。
「えびじょーは、おにくたべないの?」
「あー。えびぞーは、もうお腹一杯なのよ。」と、横にいた人間の”ホイクシ”が割り込んだ。
愛羅(てぃあら)は、くりくりした眼をランチプレートの人参に向けながら、うんうんとうなずいた。先ほど、エビゾウに対して、問いかけてきたのは彼女だった。
「えびじょー、すきなおにくは?」
ここまでのやり取りを踏まえ、先ほどの返答を訂正するよう、クラウドブレインからメッセージが届いた。アメリカン和牛ビーフフレーバーの人造たんぱく大豆ミートがベストだと。