初めて買ったCD(SF短編)
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"Compact Disk(CD) is a digital optical disc data storage format."
コンパクトディスク(Compact Disk、CD(シーディー))とはデジタル情報を記録するためのメディアである。;Wikipediaより
「へえー。おばあちゃんの若いころ、”CD”はこんな意味だったんだ。」
愛羅(てぃあら)は、くりくりした眼をテキストモードのVRチャットに向けながら、うんうんとうなずいた。学校から出された歴史の課題を片付けているのだ。
母と祖母はVRモードで対面していたが、彼女はベッドに寝転んでいることがばれないようにテキストモードで割り込んだ。VRチャットには、自分の姿そのままのVRモード、見せたい好きなイメージモデルに変更できるアバターモード、文字だけのテキストモード、音声だけのいわゆる古典的な電話と同じテレホンモードがある。アバターモードでは自身の所作をなぞらないようにも出来るが、ぎこちなくなるのと、余計な操作を要求されるので、ちょっとしたVRチャットではテキストモードかテレホンモードが使われることが多い。
「おばあちゃんが初めて買ったCDはね、音楽が記録されていたの。もうディスクメディア自体が時代遅れだったけれど、古道具屋さんで買ったのよ。」
「へえー。私が初めて買ったCDはね、あの”えびぞー”なのよ。」
本物の犬は高価なこともあり、CD(Clone Dog)と呼ばれるロボット犬が小中学生には人気となっている。CD(Clone Dog)は、見た目は犬に似ていなくもないが機械的な姿をしている。
えびぞーは、自分の名前を呼ばれたのかと顔(に当たる部位)を、愛羅(てぃあら)に向けたが、そうではなかったことに気が付いて、元の方向に向き直った。
CD(Clone Dog)は、本来ネットワークに接続して利用するのだが、この家では、本物の犬を飼う練習をするとのことでオフラインとなっている。ちょっと寂しそうに見えたのは、そのためなのだろうか。
おまけ
このSpotMini、きもいけど、なんとなく可愛く見えたりもする。
そして、バナナの皮は本当に滑るんだね(笑)