midqqのブログ

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私も、見事に引っかかった! ~ ブルーバックス 「超常現象をなぜ信じるのか 思い込みを生む「体験」のあやうさ」

まず断っておきますが、タイトルに掲げた本は、超常現象を否定している内容ではありません。

UFO(未確認飛行物体)やUMA(未確認動物)、超能力や占いを信じる人でも、安心して読めますし、蔓延っている似非科学や、宗教と言っても差し支えない科学教的な内容でもありません。

まっとうな科学本です。

 感想

この本には、人間の認知の偏りを知るためのテストがいくつかあります。それほど難しいテスト問題ではないはずなのですが、ほとんどの問題で、見事に引っかかりました。疑い深くて論理的だと思っている私(笑)が、です。

また、自身を客観的に捉えるための、いわゆるメタ思考に役立つことが多く書かれています。印象に残った二つほどを、紹介しましょう。

予期にそって情報を確証しようとする確証バイアスが、ステレオタイプ的なものの見方を助長している

予期に沿った情報収集が行われてしまう事には、うなずかざるを得ませんでした。

例えば、初対面の人について、あらかじめ「内向的な性格」との情報を得ていた場合、「騒々しいパーティーのどんなところが嫌いですか?」といった、予期を確認する質問が多くなるのは、心当たりがあります。

その人が、内向的な面も外向的な面もそこそこ合わせもった人、つまりふつうの人でも、「内向的な性格」という予期にそった答えになってしまうことが多いので、予期を確証することになってしまうとのこと。

こういった認知が、ステレオタイプ的なものの見方を助長してしまうんですね。

回帰の誤認識が「ほめること」と「叱ること」に関する誤信念を生み出す

この事実は、目からウロコでした。

「叱ることが非常に効果的だという素朴な信念」が、回帰の誤認識によるところもあるといった話は、衝撃的でした。

よいこともすればわるいこともするふつうの子なら、よいことをした後にはわるい状態へ回帰する可能性が高い、その逆に、わるいことをした後にはよい状態へ回帰する可能性が高い、というのは確率論でも正しいことは分かります。

これが、「ほめた後にはわるくなる」、「叱った後にはよくなる」という具体的な体験をもつことになり、叱ることへの信頼を生み出してしまうとのこと。

だから「ほめて伸ばす」ほうがよい結果をもたらすんですね。教育心理学の研究でも、明らかになっており、科学的にも正解なんですね。

 

星5つのところ、星4つ。自身を見つめなおすこともできる、優れた科学本です。

唯一、残念なのところは、固定レイアウト(ページ全体が画像のような扱い)になっていることです。文字列を反転できないので、知らない単語を調べるのが面倒だったり、気になる箇所をハイライト出来ません。

超常現象をなぜ信じるのか 思い込みを生む「体験」のあやうさ (ブルーバックス)