彼が居た世界 ~ 蟲師 外譚集
『蟲師 外譚集』は、彼(蟲師ギンコ)が居たであろう世界を、普段と違った味で感じることが出来る作品でした。
蟲師 外譚集とは
外側の”譚”(物語)と言うタイトルが示すように、漆原友紀さんの『蟲師』をベースにした、別の作家さん5名によるオリジナル短編集です。『蟲師』が掲載されていたマンガ雑誌「アフタヌーン」つながりの作家さんによる一種のアンソロジーコミックと言えます。蟲師ギンコの居た世界と、時間と場所は違ったりしますが、同じ”蟲”の居る世界を描いています。
少々残念なのは、原作の作家である漆原友紀さんは、カバーイラストと折り返し部分のコメント*1のみで、本編中に作品はありません。
感想
表紙 漆原友紀さん
漆原友紀さんの作品が読めないのは残念ですが、表紙は描き下ろしとのことで、じっくりと眺めてみると、結構、味わい深いです。
鉄道か道路か不明ですが、海岸沿いの高架下に佇むのは、蟲師のようです。コートのような服装をした姿や引き出しの多い薬箱から、蟲師の主人公ギンコを彷彿とさせます。
高架下の上部にかかるツタに紛れて、蟲たちもたむろしています。蛍光灯のような街灯や、電柱に伸びた電線、車止めのバーなど、本編より現代に近いようですが、変わらず蟲は居る(在る?)ようです。
高架の柱に貼られている注意看板は、Kindle版では、ぼんやりしてよく分からないのですが、自転車?に対して何を注意喚起しているのか気になります。
歪む調べ 熊倉隆敏さん
原作の9巻「風巻き立つ」に話に出てきた身を滅ぼした蟲師のお話かもしれない。正しく扱えば有用だが、間違った使い方をすれば災厄が起こるという、現実でも似たような話がころがってます。
他の4作品と違い、この作品は話の雰囲気も原作に似ています。完結している『蟲師』だけれど、もう1話が余分に読めてよかったと思うような作品。ギンコは出ませんが。
滾る湯 吉田基己さん
蟲師のお話は、薄ら怖いものが多いですが、これはそういった感じを受けない、まさに違った味でよかった。温泉でのお話と言うこともありますが、読み終わった後にポカポカします。
つまらない感想を一つ。体温が高温になると男性機能に悪影響が出ますが、彼は大丈夫だったのかな?
海のちらちら 芦奈野ひとしさん
ホコリっぽい日に目のすぐ近くで見える泳ぐような細いのや、ぎゅっと目をつぶったときに見えるチカチカも、実は蟲なのかも。そんなふうに思えると楽しい。
Amazonかどこかのサイトで見かけた感想に、ポエムと書かれていた人がいましたが、同じような感想を持ちました。
組木の洞 今井哲也さん
現代の蟲師グループの活動風景、新宿駅のウロ穴が舞台。本当の新宿駅も、まさしく迷宮ですから似たようなものかも。絵柄のせいか怖さを感じませんが、実際は怖さもあるお話。
お姉ちゃんと喧嘩した妹が、元気を取り戻したのは良かった。笑顔に萌え~。
蟲師の世界感をおさらいできます。
影踏み 豊田徹也さん
豊田徹也さんの作品に出ているらしい探偵山崎の不思議で物悲しいお話。その探偵さんが住む現代世界に、蟲が絡んだ事案があれば、こんなふうなのかな。やる気なさげでテンション低いけど、やることはやる寝ぐせ?ヘアーの探偵さん、好きになりました。豊田徹也さんの作品を読んだことが無いので、読もうと心に誓ったのでした。
お話は終わっても、蟲に囚われたままの人がいるのは、正直怖いな。
過去記事では、漆原友紀さんの特別篇の感想を書いています。
やっぱ悪役はつらいよな ~ 吉川英治 「鳴門秘帖」
「俺たち悪役はつらいよな」
「ウム」
「ま、ロクな死に方しねえだろうサ」
「ウーム・・・・・・」
今回は、吉川英治氏の『鳴門秘帖』(なるとひちょう/なるとひじょう)の感想です。
鳴門秘帖について
昭和20年代に、新聞に連載されていたそうです。私が読んだのは青空文庫版になります。6巻構成の長編です。
大衆文学を開拓した作品で、伝奇小説黎明期の傑作である。Wikipediaより
江戸時代中期、「幕府隠密とその仲間たち」 vs「阿波徳島藩」の討幕が絡んだお話です。歴史上の人物や事件がちらほら出てきますが、伝奇小説とある通り、エンターテイメントに徹したフィクションです。
ちょろっとだけ感想
大阪と江戸の往来、阿波への渡海など、場面も大きく変化していくし、個性的な人物も多いし、恋情もあり、いろいろと楽しめました。長編とは言え、さらさらと読めます。細かなところへのツッコミは野暮なので、そこは気にせず読み進めましょう。主人公無双で痛快なのは良いのですが、それにしても、「悪役はつらいよな」と同情したくなるお話でした。ああ、愛すべき悪役たち、何人が正義の名のもとに倒されたのやら。
悪役が魅力的!
さて、ストーリーもよいですが、登場人物が面白かったので、紹介しておきましょう。主人公側より、敵役の実行部隊、三馬鹿(勝手に命名)が味わい深くて好きなので、まずは敵側から。
敵役・阿波徳島藩
濃い人が多いです。はい。
三馬鹿
三悪と言うより三馬鹿という呼称がぴったり。敵側の主役です。悪役はつらいよ。
お十夜孫兵衛(おじゅうや まごべえ):敵側の主役。主役と言ってもボスキャラじゃなく、いろんな意味で話の中心人物と言う意味です。
まず、彼に言いたいのは「頭巾取れよ。」ですね。女と寝る時も取らないし、風呂でさえも一人でこっそり入る。君、髪の毛が無いのか? それとも恥ずかしい入れ墨でもあるのか?と謎が謎を呼ぶ。そぼろ助広なんて、名刀?を持ち、粋な服装でおしゃれをしつつ、辻斬りしていたザ悪党。
旅川周馬(たびかわ しゅうま):ヒロインのお姫様お千絵を幽閉し、甲賀家の財宝も根こそぎ手に入れようとする悪い奴。大物かと思いきや、三馬鹿の中で、剣技が一番弱くてパシリにされている可哀そうな人。総髪のニキビ侍、ブサメンなのでヒロインから嫌われているのも可哀そう。本来は侍と言うより隠密だと思うけれど、実力を出し切れなかったかも。
天堂一角(てんどう いっかく):剣技一筋でカタブツ。三馬鹿の他の二人と違って、そんなにあくどい事はしていないのに敵側に属したせいで、ろくでもないことに。剣技だけは敵側で一番。
黒幕
蜂須賀重喜(はちすか いえよし):なぜ討幕に走るのか、いまいち分からない若殿様。歴史上は、出羽秋田新田藩 佐竹氏の血を引くし、阿波徳島藩も数代前から松平大膳家の血筋になっていて、なぜ打倒徳川となるのか謎。男に生まれたからにはテッペンを獲れという事なのか?
竹屋三位卿有村(たけや さんみきょう ありむら):題名にある秘帖の元となった、阿波徳島藩の軍備マップを作成して、囚われの世阿弥の居る場所に落としちゃったうっかりさん。ものすごく行動的で、頭も回るし、敵側の実質ボス。でも、居候。
そのほかの人
森啓之助(もり けいのすけ):もうちょっと悪人として活躍してくれそうだったけど、末路は・・・・・・
宅助(たくすけ):森家の中間。森啓之助の囲い女お米を見張る。いかにもな小悪党だが、下っ端の悲哀を感じた人。
川長のお米(かわちょうの およね):内向的で、器量良し。結核を患っている。悲劇のヒロイン属性を沢山持つ。
その他、名もなき原士(阿波徳島藩の下級侍)さんたちは、上からの命令に忠実なせいで、主人公側に倒されまくる。悪役はつらいよ。
主人公側・幕府隠密
主人公側に居なきゃ、悪人と変わらない所業の人もちらほら。勝者が正義なのだ。
主役級
法月弦之丞(のりづき げんのじょう):ザ主人公。剣技がめっちゃ強い、イケメンでモテる、身分がそれなりに高い。個人的に好きになれなかった。ある意味、大量殺人鬼。
お綱:見返りお綱と呼ばれる凄腕女スリ。主人公と行動を共にするヒロイン。裏家業から足を洗えただけでもよかった。3ヒロイン(お千絵、お米、お綱)の中では、一番好きな人物。
万吉(まんきち):岡っ引き。敵方が刀で殺しに来るのに、十手と取り縄で頑張る人。殺伐とした人が多いところ、人情家なところもいい。
甲賀世阿弥(こうが よあみ):主人公側を阿波潜入に引きずり込んだ張本人と言えなくもない。ストーリー上、仕方なしとは言え、甲賀組は隠密活動を組織的に行わないんだね。そりゃ、滅びるさ。
そのほかの人
序盤で犠牲になった人、鳩の人、スーパー助っ人、平賀源内さん、幕府方のお偉いさんなど多数居ますが、割愛。
青空文庫
青空文庫(あおぞらぶんこ)は、著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品のテキストを公開しているインターネット上の電子図書館である。(Wikipediaより)
吉川英治氏の作品も、公開されています。私は、Kindle版で読みました。
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鈴の音
ちりりん、ちりりん。
曇りガラスがはめられた窓の外、庇(ひさし)から窓の高さにかけて、鈴の音が揺れている。
少しだけ開け放した窓からとんとんと軽快に、目隠し囲いへ影が動いた気配がする。レースのカーテンを閉じたままにしてあるので、ほんとうは影が見えるわけではないのだが、なんとなくそんなふうに感じた。
たまに、上の階から響くせわしない人間の足音には不快な気持ちを抱かざるを得ないが、鈴の音がする不法侵入者の気配には和む自分がいる。大雑把に言えば、音の大きさはそんなには違わないはずだが、感じ方は大いに違ってくる。まったくもって不思議なものだ。
ふと気が付けば、近かった夏ゼミの声が遠くなっている。何をするでもない午後のけだるい時間は、窓からほんのりと夕立の匂いを届けてきていた。
名将は三度死す! ~ 吉川英治 「三国志」
名著が全巻無料で読めるなんて、すばらしい!青空文庫、万歳!
と言う訳で、吉川英治氏著の三国志を読破しました。小説の三国志を始まりから終わりまで読んだのは、これが初めてでした。
コンピュータゲームの三国志や、NHKの人形劇三国志(相当古いですね。再放送だったけれど)などから、有名エピソードをつまみ食いして、おおよそのストーリーは把握していましたので、すんなりと話に入っていけました。
吉川英治氏と三国志
吉川英治氏と言えば、昭和の前半に大活躍された、歴史小説や時代小説の大家です。他にも、「宮本武蔵」や「新書太閤記」、「新・平家物語」などなど、名著がたくさんあります。
そして、この「三国志」ですが、三国志演義(歴史をもとにフィクションを交えた小説)を下敷きに、吉川英治流に大胆なアレンジを施した作品だそうです。
驚いたこと
読破後、ブログのエントリを書くために調べていて、少々驚いたことがありました。それは、新聞連載小説として1939年に連載が開始されていますが、なんと日中戦争(支那事変)勃発の1937年より後なんです。また、なんとなんと!連載中に太平洋戦争(1941年)が勃発しているんです。ちなみに、連載終了は、太平洋戦争終結前の1943年です。
(政治体制は違ってますが)戦争中の相手国を舞台にした小説にもかかわらず、見下したりした表現が一切なく、人肉食のエピソードでは単純な野蛮行為でないと背景を解説さえしているのです。正直、とても素晴らしいことだと思いました。
さてさて、感想に入っていきます。
これまで自分が三国志に持っていた印象と違っているところを主に書いていこうと思います。かなりざっくりですけれど。
序盤。桃園の誓い
劉備が、関羽や張飛と出会うところなど、丁寧に書かれていて、これまでの三国志に持っていたイメージと大分違いました。ムシロ織りの劉備さん、母のために命がけで買ったお茶を捨てられるところとか、以前に助けた女性と再会していつのまにか相思相愛になっている話とか、あれ?三国志って、戦記物だったよな?と。
中盤その1。劉備、負けすぎ!曹操、波ありすぎ!
劉備。負けまくりですね。根拠地を得ても、しばらくして負けて流浪の身になる。うわー、これで蜀を建国できるのか?と心配になるくらい。でも、負けても死なないし、何度でも再起を図るところは、すごい。
曹操。勝つときは勝つが、負ける時も豪快だな。兵数多くても、惨敗するのね。
後漢帝室は、悲しいな。力なき皇帝と、その百官。亡国は悲惨。
袁紹、意外と戦略的に戦ったのね。相手が悪かった。
中盤その2。蜀取り
蜀取りは、なし崩し的すぎる。旧蜀には援軍と言っておきながら、いつのまにか策動して乗っ取る。戦乱の時代だから仕方がないとはいえ、旧蜀を思うとやりきれない。
黄忠頑張りすぎ。馬超いつのまに死んだ? 関羽、無念。張飛は酒におぼれ、因果応報。趙雲は超優秀。魏延、ハブられ。
終盤。孔明・・・
北伐時代の蜀って、こんなメンツで頑張ってたんだ。ゲームの三国志的に観ると、きっついな。孔明さんが部下を育てる天才だったら、三国統一が叶ったかもだけれども、それは彼に望みすぎですね。
長くなりすぎるので、この辺にしておきます。
それにしても、我が日本は卑弥呼の時代なんですよね。国の在り方、人物、戦争の規模などなどフィクションが混じっているとはいえ、雲泥の差です。
名将は三度死す!
おまけ。
タイトルにありますが、魏の武将、張コウ(張郃)さんは、3回も死んじゃってるそうです。ある意味、不死身!
汝南での戦い(官渡の戦い後)。袁紹陣営から曹操陣営に鞍替え直後。劉備と趙雲を追撃中、関羽、関平、周倉の300余騎に後ろから部隊を粉砕され、屠られる。(三国志6 泥魚 三)
長坂の戦い。穴に落ちた趙雲(+阿斗)に襲い掛かるも、青釭の宝剣で肩先から馬体まで切られ、血しぶき噴き出す。紅の光に目がくらんだせいとか。(三国志7 宝剣 三)
北伐。魏延の挑発に乗って谷に誘い込まれ、逃げ道を塞がれる。その後、孔明の火計により、焼死。(三国志11 木門道 二)
青空文庫
青空文庫(あおぞらぶんこ)は、著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品のテキストを公開しているインターネット上の電子図書館である。(Wikipediaより)
吉川英治氏の作品も、公開されています。私は、Kindle版で読みました。
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ダイヤモンドオンライン 定時で帰る新入社員はトンデモ? 炎上してるってよw
こんにちは
いわゆる炎上しているコラムなので、目にされた方もあるかと思います。
コラムを読んだ私の感想なのですが、入社後の話なので就活生向けではないし、かといって、マネジメント層向けとしても、なんだか中途半端で、どうもしっくりきませんでした。もちろん、これで経営者向けな訳はないし・・・
という事で、興味をそそられたので、エントリにしてみました。
なお、念のために書いておきますが、短時間の残業しかない職場ならば、定時で帰る新入社員をトンデモと受け取る社員がいること自体に無理があり、長時間の残業がある職場を想定しているコラムだとの前提でのエントリです。
何が炎上しているの?
「なぜイマドキ新入社員は定時で帰ってしまうのか」というタイトルにもあるように、定時で帰ってしまうのはトンデモ言動とし、残業を推奨しているような記載があるから炎上しているようです。”残業は悪”とされる、今どきのビジネストレンドに逆行しています。こはいかにw
- 上司世代は、いつも定時に帰るという行動が理解できない。
- 新入社員は、アルバイト感覚、学生感覚だから定時で帰る。
- ほかの人の仕事を手伝わないで、定時で帰る社員は、社会人としての意識が低い。
- サービス残業をしている上司の姿を見て、暗い未来を感じたら、労働意欲が低い。
- 「いつまでも会社の中に残ることを良しとしない」社員は、会社への所属意識は芽生えない。
- 「ただ単に家に帰りたくない」「家庭に居場所がない」ので残業している中堅以上の社員は、定時に帰るトンデモ社員とは正反対。(トンデモの正反対は、現実的、常識的?いずれにしても、良い意味と思われる。)
- 残業を良い悪いではなく、何のために残業が必要なのか新入社員に考えさせる。
また、ビジネス情報サイトのダイヤモンドオンラインだったという事も、原因の一でしょう。これからのビジネスマンに伝える事として、いかがなものかと。
そもそも、どういったコラムなのか?
脊髄反射しては芸がないので、少々、調べてみました。
著者について
櫻井樹吏(さくらい じゅり)氏
[キャリアコンサルタント]
1980年生まれ。大手通信会社の人事部、総合人材サービス会社の若者専門コンサルタントを経て独立。 ー 該当コラムの「著者コラム・紹介」より
記事の内容からするとベテランの方かとの印象がありますが、35、6歳のビジネスマンとしてはまだまだ若い方です。これは意外でした。人事系のキャリアを積んでこられ、複数の職歴があることと、大手の企業にも勤務されています。現在は独立されているので、ある程度の規模の会社での上位マネージメントは未経験なのかもしれません。ただ、キャリアビジネスとしては結構経験のある方のようです。
コラムの趣旨
『キャリアコンサルタントが教える就職できない若者の「トンデモ行動」』
そんな就職難の実態を景況感のせいにしてしまいがちですが、実は内定をもらえない若者には特徴があります。それは、彼らが「トンデモない言動」をすることです。 ー 該当コラムの「著者コラム・紹介」より
コラムの開始が2014年1月、独立されたのが2014年4月(コラム著者のfacebook より)。サラリーマン時代に執筆が始まり、独立後も継続されているのは驚き。退職時に揉めなかったのかしら。
第1回を読むと、就職活動中の人向けコラムのようです。
今月から「就活におけるトンデモ言動」をテーマに就職活動について書かせていただく事になりました。就職活動に向かう皆さんの枠を広げ、より自分らしい就職活動をするお手伝いをさせていただきます。
少々扇動的なタイトルではありますが、トンデモ(と著者が思う)言動を知ることで、就職活動者自身が言動に気を付けることができますから、それなりに有意義なコラムかなと思います。キャリアコンサルタントとしての実績がある著者と言うのも肝でしょう。面白おかしくと言った味付けがあることで、興味を惹かれますしね。
炎上した第61回
さて、炎上した第61回目は、本来のコラムの趣旨からは外れて、番外編と言った感じでしょうか。新入社員に会社も居場所と思えるような仕事を与え、コミュニケーションをとりましょうと結論にありますので、現場の上司や先輩に向けたメッセージと受け取れます。
だとすると、残業との絡め方が、残念でなりません。定時の帰宅前に「報・連・相」するマネジメントスタイルなら、そう新入社員にも指示しておけばよいだけですし、予め業務範囲やKPIを決めておいて社員の自主性にまかせるマネジメントスタイルなら、定時で帰れない社員こそ仕事が出来ない可能性が高いでしょう。定時で帰る新入社員がトンデモだとしたら、それ以上に、ほかの社員がトンデモになってしまいます。
「仕事がいっぱい残っているのに、さっさと帰りやがって」と新入社員が毒づくなら、まだ分かりますが、現場のマネージャーや先輩社員が、新入社員に対してそう思うのは情けない限りです。定時で帰らないように予め指示しておけばよいのですから、さっさと帰ると思ってしまうのは、マネージメントの無能・無策を表していることになります。
いずれにしても、恒常的な残業が当然とされる環境は、結局のところ、社員の低パフォーマンスが固定化するだけと言う認識が、最近では一般的ではないでしょうか。
(参考)長時間労働とパフォーマンス悪化
長時間労働すると効率が良くないのは、昨今の常識だと思いますが、ソースとなる情報もありましたので、記載しておきます。
『独立行政法人 労働政策研究・研修機構 調査研究結果 No.148』より
下段の「政策的インプリケーション」に、
今回の調査によると、週実労働時間が長い人ほど健康不安は高く、健康不安が高い人ほど能力の発揮度合いに対する自己評価も、低下する傾向がみられる。また、年次有給休暇が取得しやすい職場ほど、入社3年後の人材定着率は高く、売上高経常利益率も高い傾向にある。
まとめ
一時的な繁忙期に残業はつきものですから、必要最小限にするべく努力はしたうえでの残業は、やむを得ないと思います。
ただ、人事部出身の三十歳後半のコラム著者でも、当然のように残業を是とされるのが正直驚きでした。こういう思想を持たれた理由が、これまでのキャリアによるものか、企業の採用担当との接点が多いからなのか、興味があるところです。
給料を増やすために生活残業される方や、マネージメント力量不足を棚に上げて配下に過大な業務を押し付けるしかできない方を除き、経営層や上位マネージメント層の立場の方からも、残業は減らすべきだとの考えが一般的で、ビジネス的にも正解だと思っていました。
残業が増えると当然コストが増えます。長時間労働させることで売り上げが増加し、利益も増加する職場もあるでしょうが、度を過ぎた残業は、長期的に社員の低パフォーマンスを呼び起こすのは明らかです。もし、社員を奴隷のように使い捨て出来るとしても、その会社の評判は地に落ち、将来的に優秀な人材を得られなくなって、企業が継続しなくなるでしょう。目先の短期利益に血眼になっている企業ならば残業を是とするところも聞いたりしますが、遠からず、淘汰されると思います。
本来なら、こういうコラムであって欲しかった
今回のテーマだとすれば、こんなコラムならよかったのに。(一部に曲解あり)
『コラムに書かれているような酷い残業意識を持ったトンデモ社員が若手も含めて大勢いるのが現実です。新入社員の方は、定時で帰る前に確認するなどして、自発的にコミュニケーションを取り、組織にも目を向ければ、会社生活にも馴染めて居場所が出来るでしょう。
定常的に残業が発生している職場ならば、その原因を突き止め、減らせる手立てを考えてみるもの良いことでしょう。会社ぐるみでかつ、残業させればさせるほど利益につながっている職場なら、残業地獄を逃れられる上位層へ昇進できるよう努力するか、転職をお勧めします。』
冒頭の箇条書きに、かるーくコメントを付けてみました。
定時で帰る新入社員をトンデモと考える方に向けてのコメントです。
上司世代は、いつも定時に帰るという行動が理解できない。
残業を指示しているのに、勝手に定時で帰るのならトンデモだが、そういう意図でコラムを書いてはいないだろう。組織内の本日予定の業務が定時内に終わっていないのに、何も聞かずに帰ることを嘆いているのだと思うが、誰も新入社員に指示しないのが悪い。理解できないなら、そんな上司がトンデモ。上司の資格なし。
新入社員は、アルバイト感覚、学生感覚だから定時で帰る。
新入社員の責任感が高くないのは、当然。お前が新入社員だった頃も同じだっただろ。定時で帰るかどうかは、それとは関係ない。お前らが残業を指示していないだけだ。
ほかの人の仕事を手伝わないで、定時で帰る社員は、社会人としての意識が低い。
本日、誰がどれくらい業務をすべきか決めておけ。自主性とすり替えるのは、マネージメントを放棄しているだろ。
サービス残業をしている上司の姿を見て、暗い未来を感じたら、労働意欲が低い。
労基法違反ですよw 真っ黒だ、真っ黒。
「いつまでも会社の中に残ることを良しとしない」社員は、会社への所属意識は芽生えない。
営業や外勤の社員は、所属意識が芽生えないことになるよね(´・ω・)(・ω・`)ネー
あ、意外に真実かもw
「ただ単に家に帰りたくない」「家庭に居場所がない」ので残業している中堅以上の社員は、定時に帰るトンデモ社員とは正反対。(トンデモの正反対は、現実的、常識的?いずれにしても、良い意味に取れる。)
”トンデモの正反対”は、常識的や現実的ってこと? 会社にしか居場所がない社員がそうなのか? ここだけは何が言いたいのか文章として分からなかった。
残業を良い悪いではなく、何のために残業が必要なのか新入社員に考えさせる。
これはコラム著者が考える模範解答を知りたい。
良い悪いを考えないと言うなら「組織として本日定時までに完了予定の業務が未完了であるため」なーんてのが模範解答なのかな?
残業の良い悪いを考えないというのは、企業活動としておかしい気がする。検討の結果、残業が良いと判断し、その理由が「新入社員やほかの社員が残業してでも予定業務を本日中に完了させる事が、コスト面やスケジュールを考慮したうえで、弊社の利益の最大化になると判断したため」とかじゃないと、マネージメントに問題があるのではないだろうか。
おまけ
コラム著者の本がありました。「読み物」としては、おもしろいかも?(私は読んでません。すみません。)
また、残念ながら、Kindle unlimitedは対象外のようです。(2016/8/12時点)
電子書籍読み放題サービス「Kindle unlimited」 ファースト インプレッション
2016年8月3日、電子書籍の読み放題サービス「Kindle unlimited」が日本でも開始されました。
各IT系サイトの記事と、Amazonのサイトをざっと眺めてみたファースト インプレッションを書いておきます。
どんなサービスなのか?
Kindle Unlimitedの対象作品は、雑誌の最新号を除くと新刊と呼ばれるものは少なく、どちらかといえば過去のベストセラーや往来の名作などをそろえています。イメージとしては「本屋の本がどれも定額で読めるようになった」というわけではなく、「会員制の貸本屋ができた」というのが正しい認識だと思います。
言いえて妙です。Amazonのサイトをざっと眺めてみたのですが、読んでみたいと思っている本はあまり目につきませんでした。私はKindleを利用して結構経ちますので、すぐに欲しい本はすでに買っていることが多いです。ですから、気になるポイントは、「価格が安いなら読みたい本」が対象になっているかです。
今のところは、そういった本は少ないようですので、月980円の価値があるかと言うと、微妙なところです。ただ、引用に書かれていますが、過去のベストセラーや往年の名作はちらほらとあるようで、時間があれば読みたい本は結構あります。
流行る?
Kindle Unlimitedをカテゴリー別にみると興味深いことがわかる。アダルトが圧倒的に多いのだ。カテゴリーでいうと、文学・評論の1万9808冊に次ぐ1万8629冊。ノベルからコミックス、雑誌まで幅広くカバーされているようなので、月額980円読み放題は、そこから火がつくと想像できる。これは流行る。
出た!ビデオデッキの法則w
過去、ビデオテープを使って録画と再生をするビデオデッキと言う機器がありました。表向きは、テレビ番組を録画できるのが売りだったはずですが、普及を後押ししたのはアダルトビデオだったというのは有名な話です。(ソニーのベータマックス規格は、アダルトを禁止したため、VHS規格に負けたらしい。)
Amazonのアダルトコンテンツは独自の制約を設けているので、アダルト専業のコンテンツよりソフトですが、例えばヌードグラビアが見放題なのは、悪魔のささやきに等しいでしょう。しかも、アダルトの写真集だけで7,475冊もあるんですから!
いつのまにか流行っているでしょう。
副次効果に注意
米国の実績では、利用者の読書時間が30%増えている上、非Kindle Unlimited会員向けの単品販売での購入額も、同様に30%増となるという。これは、Kindle Unlimitedの提供作品が、単品販売と同様にランキングやおすすめ機能にカウントされるため、非会員への単品販売の促進につながるとのことだ。
Amazonのサイト自体がそういう作りなのですが、読みたい本が決まっていなくて、なんとなく良いものがないかと、だらだら探すのには不向きです。
カテゴリからたどっていくと、Kindle unlimitedに一部の有名出版社が参加していない、書籍も一部に限定されている、たぶんKindle KDPとおぼしき書籍がちらほら目に付くことから、時間があっても読む気すら起きない本が大量に混ざってきます。玉石混交で選択肢が多すぎる、情報過多な状況はなんとかならないでしょうかね。
お金を出された本から、読まれた本にランキングが変わってしまうけれど、どうなるんでしょうか?
まとめ
空前絶後、とんでもない黒船サービスは言い過ぎ。街の本屋さんが大量につぶれるとか、ほかの電子書籍サービスに大打撃とか、一因にはなるけど、主因にはならない程度には素晴らしいサービスだと思います。
- すべての本が定額で読めるわけではない。(新刊、コミックなど)
- 一時点では10冊まで。
爆発的にとはいかないものの、気が付けば大量の会員を抱えているサービスになっていそうです。
興味のある方は、以下のリンクからどうぞ。
蟲師 特別篇 日蝕む翳
漆原友紀さんの「蟲師」より、特別篇です。2年ほど前の2014年にKindle版も発売されていて、購入済みだったのですが、ずっと塩漬けにしてました。ふと思い立って、読み始めました。
本編は10巻で完結していますが、同じ世界と登場人物の物語です。時間軸は不明ですが、後日譚と言う訳でもないようです。
読み始めると、懐かしい思いがこみ上げてきました。細かなところは忘れてしまっていますが、こんな登場人物が居たなぁ、そうそう懐かし気な世界観だったなと。昔、本編を読んだことがあり、アニメも観ていたので、さっと入り込めました。
日食がテーマの作品です。太陽と月を模した双子が清楚で可愛い。服装も例のごとく和装っぽくていい。謎が謎のまま残ってしまうのは、本編と同じですが、懐かしい顔ぶれに出会えます。
1冊のコミックとしてボリュームが足りないとの声もあるようですが、1話としては前後編に分かれていますので、十分に楽しめると思います。それにしても懐かしかった。
本編はこちら