素直に読めなかった童話 ~ 芥川龍之介 「白」
真っ白なワンちゃんが、真っ黒になってしまうお話。
荒っぽく筋書きを描けば、「飼い犬がある出来事から住処を追われる。罪の意識にさいなまれ、自死のために各地を放浪。意図せず徳を積み重ねたため、最後に救済される。」そんな童話です。
よくできた童話なのでしょうけれど、素直に読めなかったです。
最近読んだ芥川の作品「河童」や「地獄変」、芥川自身に共通する、「自殺」。この「白」の主人公も、罪の意識から自死するため、各地を放浪して無茶な行動を繰り返しています。そんなテーマは、どうも暗くて潔癖過ぎて、好きになれません。
真っ黒に毛並みに変えられたことで神を呪ったり、やけっぱちの破れかぶれになってくれたほうが、人間らしく思うのです。
最後に主人公が救われたのは、ほっとした半面、救われて欲しくなかったと思ったのは、私の性格が歪んでいるからなのでしょうか。
誰が地獄へ落ちるべきか ~ 芥川龍之介 「地獄変」
武士の世になる前の、貴族の世の物語、大好きです。 おどろおどろしい人間のありようが、グッときます。
いろいろな解釈が出来る作品なので、そこがまたよいです。芥川龍之介の芸術至上主義を、「地獄変」を描いた絵師良秀を借りて表現しているといったところが、よく見かけるところです。
感想
読み終えて、まず思ったのは、大殿の残酷さでした。良秀の娘を車ごと焼き殺す趣向を考えたのは、大殿です。さすがの良秀も、娘を助ける行動に出ると考えていたに違いありません。それが、芸術のためには娘の死も厭わなかったため、青ざめていたのでしょう。
いずれにせよ、地獄変の絵に描かれているように、身分や年齢に関係なく人間は地獄に落ちるべしと言われているようで、恐ろしいです。物語の中で言えば、良秀は言うに及ばず、大殿や良秀の娘も、地獄に落ちろと。そして、語り手の奉公人でさえ・・・。
ただ、望むとすれば、猿の良秀だけは、天国へ召されていて欲しいです。
私には、理解できていないと思う ~ 芥川龍之介 「河童」
正直、私には理解できていないと思います。
河童の奇妙な暮らしぶりが描かれているお話で、それ自体は難解ではないです。ただ、芥川の意図するところが理解できず、もやもやとした暗さが残った読後でした。
人間社会を風刺した作品だということは分かるのですが、芥川は、自身を含め、愚かな人間や人間社会が許せなかったのでしょうか。
「河童」が発表された同じ年に、芥川は自殺しています。
これまでに読んだ芥川龍之介の作品
さらっと読め、万人が想像しやすい題材の経済入門書 ~ もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら タケコプターで読み解く経済入門
SF好きには気になる題名だった事もあり、しばらく前にKindle版を購入。近頃、小説を読むことが多かったので、気分転換として本書を選びました。
多くの人に想像しやすいドラえもんを題材に、イノベーション(技術革新)発生時の経済の動きについて、実在の企業名を挙げて分かりやすく、説明されています。
感想
正直、読む前に期待していた内容とは違っていました。キャッチーな題名に騙されますが、副題にある通り、経済入門書です。SFじゃなくて残念でしたが、内容は悪くはなかったです。
空想科学読本のようなSFエンターテイメント本じゃないです
本書のあとがきにもありますが、科学的な検証は脇に置かれています。SFじゃない。
経済入門書として、今時のキーワード「AI」、「VR」、「スマートウォッチ」が普及したらどうなるかだと、どうしてもIT関連企業の印象が強く、世の中の経済活動を広く想像しづらいですよね。
「タケコプターが実現したら、保険、警備などに新たなビジネスチャンス」と本書にありますが、経済に疎くとも、これなら書かれている内容は想像しやすいです。SFにこだわる人には物足りませんけれど、経済入門としては、いいとっつきと思いました。
出版から5年以上経過しているので、実在の企業名などに違和感
実在の企業名が挙げられているので、分かりやすい反面、少々時代遅れなところもあります。書籍である以上、仕方がないことです。
ワタミの介護事業、三洋電機「エネループ」など。現在の姿に思いをはせると、何とも言えない気持ちになります。時の移ろいは残酷。
とは言え、分析は的外れではないです。2010年当時を題材とした経済本として、本書を読むべき。
「タイムマシン」は、出てこない
本書の中でも述べられていますが経済入門なので、やむなしですね。影響が大きすぎて、発散しますもん。
あとがきも熟読すべし
あとがきは読み飛ばされる方もいらっしゃるかもしれません。でも、この本は、あとがきも読むべき。
著者がファンドマネージャーで、どういった視点で経済を見ているかが述べられています。ほんの入り口、まさに入門でしょうけれど、経済を勉強した気持ちを持てます。
浅く広く分かりやすく、短めでお手軽。そんな経済入門としておすすめ。星5個のうち、3個くらいかな。
【備忘メモ】原材料名欄の『/』(スラッシュ)の意味、知っとるけ?
おやつにスナック菓子をボリボリ。
袋の原材料名欄を眺めてたんですけど、そこに、見かけない文字を見つけました。
途中で『/』(スラッシュ)で区切られている箇所があったんです。原材料が『、』(読点)で区切られて並んでいるのはおなじみですが、『/』で区切られているのは初めて見ました。これまで気が付かなかっただけかもしれませんが。
おお?
こんな感じで書かれていました。
原材料名:小麦粉、植物油、でん粉 / 膨張剤、調味料(アミノ酸等)
『/』(スラッシュ)に、どういう意味があるのか、ご存知ですか?
人によっては、どうでもいいようなことでしょうけれど、私はものすごく気になりまして、すぐに調べました。(こういう時、ネットは便利だなぁと思います。)
そして、消費者庁のサイトで見つけました。
「原材料」と「添加物」の区分なんですって。『/』(スラッシュ)の前に書かれているのが「原材料」で、後ろが「添加物」です。
へえ~。これまで、ちゃんと区分できなかったけれど、これならはっきりしているね。
こうなったのは、2016年4月1日から「食品表示法」が施工されて、新しい食品表示制度が始まっていたかららしい。知らなんだ・・・
出展:消費者庁のサイトより
消費者庁ウェブサイト
食品表示法等(法令及び一元化情報)
食品表示についてのパンフレット
知っておきたい食品の表示(平成28年6月版・消費者向け)[PDF:4.5MB]
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syoku_hyou_all.pdf
PDF 8ページ目
トピック6 原材料名と添加物の見方 ②原材料名欄に原材料と添加物を区分して表示 例 1)
小説「宮本武蔵」のできかた ~ 吉川英治 「随筆 宮本武蔵」
吉川英治の小説に「宮本武蔵」がありますが、その小説を書くにあたっての資料収集や取材、どういうふうに考えて小説にしたかが書かれている随筆があります。
それが「随筆 宮本武蔵」です。
小説「宮本武蔵」を読んだ後、この随筆を読みました。いろいろと興味深い話がありました。
武蔵に関する史実は少ない
武蔵の生涯に関して史実と思われることは、幼少期と晩年くらいで、創作されたものが多いのは意外でした。最強の剣士と呼ばれるくらいで有名なのに、何とも不思議なことです。この随筆が書かれてから80年近く経っているので、研究は進んではいるのでしょうけれど。
史実と創作
小説には、準主役として本位田母子が出てきます。実際にある本位田家の人物から、先祖にそのような人物は見当たらないと言った反論があったくだりは、ちょっと笑ってしまいました。本位田母子は、偉大な人物として描かれていないので、分からなくもないですが。
また、小説には禅僧沢庵がキーマンとして出てきます。史実として武蔵と交流があった証拠はないそうですが、出生地が武蔵と近所だったり、剣と禅の関係から、エピソードに組み込まれたようで、そこは吉川英治の小説家としてのすごさを感じます。
芸術家としての側面
武蔵が書いたと思われる絵画についても、随筆で触れられています。絵の師匠が居たのか居なかったのか不明ですが、水墨画なんかは独特の勢いがあります。
インターネットで検索するとすぐ観ることができる「古木鳴鵙図」などは、鵙(モズ)が止まっている枝の勢いなんか見ても、すごいです。何度か書き直したかもしれませんが、水墨画ですから、完成品は油絵などと違って修正がききませんし。
昭和二十年代の取材ぶり
武蔵の出生地との説がある岡山県の山奥に自動車で訪問される辺りは、時代を感じます。自動車を物珍しそうに眺める子供や、蓑笠や和服や紋付き袴を着ている人の描写があったりします。
巌流島のあるあたりの取材でも、要塞法という法律で写真やスケッチが禁止されている話も出てきます。そんな時代に書かれた小説なんです。
晩年
小説では巌流島の決闘で終わりますが、随筆は史実から晩年について書かれているのも、うれしいです。小説を読むと、”その後”も知りたくなりますから。
小説では出てこない武蔵の著作についても、難しい内容ですが触れられています。
一乗寺下り松の決闘の着想
小説では、実際に見たかのような躍動感に溢れる描写があります。万端準備を整えた数十人の吉岡門下と戦って勝つなんて、とても無理そうなんですが、小説を読むとありえそうに思えてきます。
その着想が、現地を取材することで生み出されたことが、随筆を読むことでよく分かります。
この本は、小説「宮本武蔵」を読まれた方へ、武蔵の余韻を味わうことができるのでお勧めです。
【チラ裏】年末年始の宅配便が過酷なら、送料を値上げすればいいのに、なぜ?【結論なし】
ちょっとエントリを書きたいニュースを見かけました。
ただ、掘り下げが浅くて答えを出してはおらず、チラシの裏に書くようなレベルなので、読まれる方は、ご留意くださいませ。
そのニュースとは、これです。
Yahoo!ニュースにも掲載されていたので、ご覧になられた方もいるかもしれません。
宅配業界に詳しくないのですが、これって送料を値上げすればいいと思うのです。そうして、賃金用の原資を作り、ドライバーを高給にすれば、人材確保も出来て、問題解決しそうなんですが、何故、そうならないんでしょう。
分かる方、いらっしゃいますか?
資本主義における市場の見えざる手が働かないのでしょうか。
送料を値上げすると他社に仕事を奪われる?
全国規模の競合は、日本郵便と佐川急便くらいですが、佐川はアマゾンの宅配から撤退しています。実質、日本郵便との競合だけなのであれば、アマゾンとの値段交渉は、やりやすいと思うのですが、どうなんでしょう。
また、中小の宅配業者もアマゾンの宅配を担っていますが、先ほど挙げた3社が撤退しても、こなし切れるのでしょうか。具体的な根拠はないのですが、難しい気がします。新規参入も、そう簡単には行きませんし。
と言うことは、他社に仕事を奪われにくいはずです。
送料を値上げすると個人宅配が減少する?
これは減少するでしょう。でも、業績悪化しない程度に値上げすればいいのです。宅配ピザの値段が高いことが、たまに話題になりますが、注文(需要)が多すぎても困るので、値段を上げて注文(需要)を調整していると聞いたことがあります。でも、そういえば、このクリスマスに需要が多すぎてパンクしたところがありましたね。ははは。
ま、宅配業者は、直接に物を売る側ではないですが、似たようなものと言えば、大雑把すぎるでしょうか。
人手不足
佐川急便が年末に遅配を起こしているのは、ニュースになっています。
これも、給料を上げれば、従業員は集まりますし、人材の質も高められます。 給料を上げるのが難しいほど、利益を出すのが難しい業界ならまだしも、そんなふうには思えないです。
繁忙期は料金を高めにするとか、飛行機でもやってますよね。同じようにすればいいのに。また、人員育成も長期間かかるわけでもないし、パート、アルバイトも使いやすく、人員調整もしやすいと思えます。
労働組合で団結して、ストライキでも起こされたら大変なんでしょうが、仕事柄、組織されにくく、今時の流行りじゃないと言うのもあるのかな。賃金が上がらない原因の一つに。
まとめてみても、ECサイトの宅配は、供給側有利で儲けやすい、将来有望とまではいかないものの急激な先細りはない、当面はおいしい業界にみえます。
現実はそうでないようで、私の認識の何かが間違っているのでしょうか。 供給有利の携帯電話業界みたいに、料金が高止まりするのもあれですが、はてさて。